見えない災害を可視化する。
キーワードは避難社会(evacuation society) と環境世界(ecological world)。
2011年3月11日の地震による福島第一原発事故発生後、ただちに内閣総理大臣により発令された「非常事態宣言」はいまなお解除されていない。しかし6年目の2017年3月末・4月初は大きな節目になった。除染が終わり帰還が認められるエリアが増え、仮設団地の解消・集約化が進みはじめたのである。2019〜2020年春には、除染の進捗から取り残されてきた大熊町・双葉町でも一部避難指示が解除されている。
しかし「避難社会」は終わらない。人々も地域もなお揺れ動いている。
決断にはつねに考慮する条件の束としてのコンテクストがあるが、どのようなフレームで、どのようなコンテクストを可視化し、理解し、また重視するかによって、決断は大きく変わることがある。そのコンテクストを目に見えるかたちとして提示したい。
そのひとつが、避難社会 evacuation society である。場所を失った社会にも一定のかたちの推移があり、それを支える空間があることを示そう。
もうひとつは、環境世界 ecological world である。社会を失った空間が、およそ16-17世紀から「3.10」までのあいだに構築してきた美しい生の秩序を再現しよう。
やがて避難社会は一定の収束に向かう。おそらくは新しい参加者を迎えつつ。それが環境世界をどのように再利用することになるだろうか。おそらくは新しい生産や社会の様式を組み立てながら。
ラインナップ
福島アトラス01:原発事故避難12市町村の復興を考えるための地図集,2017年3月発行
福島アトラス02:避難社会とその住まいの地図集,2018年3月発行
福島アトラス03:避難12市町村の復興を考える基盤として環境・歴史地図集(小高),2018年3月発行
福島アトラス04:避難12市町村の復興を考える基盤として環境・歴史地図集(葛尾),2019年3月発行
福島アトラス05:避難12市町村の復興を考える基盤として環境・歴史地図集(飯舘)製作中
制作
企画発行:特定非営利活動法人 福島住まい・まちづくりネットワーク(理事長=難波 和彦、理事=芳賀 沼整・浦部 智義)
監修:青井 哲人
制作チーム:青井 哲人,篠沢 健太,川尻 大介,中野 豪雄,保田 卓也,西垣 由紀子,原 聡美,林 宏香,野口 理沙子,一瀬 健人,遠藤 秀文,滑田 崇志,高木 義典,明治大学 建築史・建築論研究室
編集:川尻大介
デザイン:中野豪雄・小林すみれ・保田卓也・西垣由紀子
編集協力:井本佐保里・須沢栞・千野優斗(東京大学)/株式会社ふたば(ドローン撮影)/株式会社はりゅうウッドスタジオ・日本大学工学部 浦部智義研究室
出展・掲載・受賞
第16回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 2018 日本館 出展
対談:貝島桃代+青井哲人「建築の民族誌、その行為=経験としてのドローイング」(10+1 website 2018年7月号 特集「建築の民族誌:第16回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館)